ゴマの花には「ごまかし」がない

2017年12月発行  ゴマは、熱帯アフリカのサバンナを起源とする最古の油料作物で、 『千夜一夜物語』に出てくる〝開けゴマ〟の呪文は、 この物語の作られた六世紀前後に すでにゴマが神秘的な力を持つものと認められていたことを示しています。  紀元後一〇〇年頃の中国では油に富む種子を「麻」と呼び、 本種は西域の胡から渡来した麻なので「ゴマ(胡麻)」と名付けられました。 もともとイン […]

苦悩する神 その5

2017年11月発行  若狭比古神が神の身を離れて仏法に帰依したいと苦悩していたことが 古い文献に見られます。 その結果、神護寺が建てられ若狭神宮寺となりました。  そこで、この神は何かということを前回で触れました。 そして、それぞれの地域で、 それぞれに神は存在していたのではないかと書きました。 原始宗教の起源説的にみれば、 トーテミズムが似通ったものではないかと推論したので […]

花野の夢

2017年10月発行   とことはに覚むなと蝶のささやきし花野の夢のなつかしきかな  これは小浜出身の明治時代の歌人、山川登美子の短歌です。  舞ってきた蝶が「永遠に目覚めないでね」とささやいたとは幻想的ですね。 夢の中で花野(秋草の花が咲く野辺)に遊んでいたのでしょうか。 それとも花野で夢や憧れを思い描いていたのでしょうか。 どちらとも受けとれますが、時がたち、現実の生活の中 […]

死んだらどこへ行くのでしょうか ?

2017年9月発行  科学の問題として扱うなら、 この問いに対する一番適切な答は「分からない」でしょう。 宗教の問題として扱うなら「信じているところへ行く」が 一番適切な答だと思います。 つまり阿弥陀さまを信じている人は極楽浄土へ行く。 死ねばゴミになると思っている人はゴミになる。  仏教の基本の教えでは、 「生前の行為にふさわしい所に生まれ変わる」とされています。 つまり善い […]

旧町名は語る(四)

2017年8月発行  小浜の町割りは、京極髙次により城下建設が始まり、 慶長十二年に町数四十一、家数千二百三十七軒。 これらが東西二組に区分され、家数は一町に三〇軒ずつと計画された。 旧西組の外縁部(柳町、青井町など)はこの時点でまだ町立てされていない。 二十八年後の寛永八(一六三一)年、町改めがあり町数四十六、 家数千六百十九軒。貞享元(千六八四)年町割りで改めて五十二町、 […]

隠岐の島で語られている八百姫伝説

2017年7月発行  島根半島の北、 四十から八十キロメートルの日本海に点在する隠岐諸島は、 主に四つの島からなっています。 そのうちの一番大きな島(島後)の、都万地区の湾沿いに広がる 屋那(やな)の松原(日本の白砂青松百選)の案内板(写真)に、 八百比丘尼について、次のように記されています。 『屋那の松原』  この松は、「八百比丘尼」が一夜にして植えようとしましたが、 ある男 […]

加納琢磨翁之碑

2017年7月発行  小浜市小松原川西区の西津漁港・小公園に 加納琢磨翁の立派な顕彰碑がある。  三メートル余の御影石の碑は   正面に加納琢磨翁之碑、   側面に海軍大将 名和又八郎書、   裏面に大正十三年十二月 西津漁業組合建之と書かれている。  碑の傍らの立札には、   加納琢磨翁、西津村漁業組合の発展のため、その基礎を固め、 その存在を不動のものにするため尽くされた人 […]

踊る玄白

2017年6月発行 『解体新書』を刊行し西洋医学を拓いた杉田玄白は小浜藩医でした。 また、その蘭学導入の苦心を述べた自伝『蘭学事始』は、 福沢諭吉をして読むたびに落涙せしめたといわれています。 今年は玄白が亡くなって二〇〇年ですが、 少し違った視点から人間玄白を見てみます。  七十九歳の時、九死に一生を得る大病をしますが、 病後の午睡時に見た夢を自ら描いたのがこの 今様をうたい […]

天徳寺馬頭観音

2017年5月発行 今を去る千三百年ほど前の養老年間、 奈良の都で元明天皇の病気治療を果たした泰澄大師は、 白山への帰途若狭の国へ回り、 滾々として湧き出る冷水を汲み宝篋嶽に上がりました。 上がってすぐに北の方角に向かって祈り白山権現を勧請しました。 白山権現は十一面観音と日本の神とが一体になったものです。 その後大師は山腹へ下りて馬頭観音一躯を刻み、 丁重に岩洞に安置して去っ […]

杉田玄白の生きざま

2017年4月発行  『解体新書』を刊行し、我が国の蘭学・医学の進歩に大きく貢献した杉田玄白が、 文化十四年(一八一七)四月八十五歳で 『医事は自然に如かず』の書(人間の自然治癒力には医学もかなわない)を残して この世を去って、今年は二百年の節目の年です。  後世に蘭学の始まりを正しく伝えたいと、八十三歳で筆を執った 『蘭学事始』には、オランダの解剖書『ターヘルアナト […]

大船絵馬

2017年3月発行 西国二十九番札所の松尾寺は青葉山の南側中腹に位する。 同寺は唐の僧・威光上人の開基、 若狭松尾寺と呼ばれたとも伝えられ、 若狭の人々の厚い信仰の対象でもある。  弘化三年(一八四六)、小浜の廻船問屋志水源兵衛、 船頭吉次郎らが航海の安全を祈願して大船絵馬を奉納した。 大阪の船絵馬師の杉本春乗清舟が描いた、 縦八二センチ、横一八三センチの大船絵馬には、 伊勢丸 […]

佐久間艇長 最後の一筆

2017年3月発行 花の季節を迎え、新学期が始まると佐久間艇長の故郷、 若狭町(三方地域)の子供たちの歌声が野や里からよく聞こえてきた。 「花は散りても香を残し 人は死しても名を残す」 で始まる佐久間艇長頌歌(ほめたたえる歌)である。  毎年四月十五日に行われる佐久間艇長遺徳顕彰式典において、 海上自衛隊舞鶴音楽隊の演奏に合わせて参列者全員が斉唱する歌でもある。 このとき歌われ […]

新しい若狭の夜明け

2017年2月発行 昨年十二月、 新しい若狭の夜明けを告げる吉報が届きました。 若狭の人々はもとより、県民が四十三年間待ちに待った 北陸新幹線小浜・京都ルート決定の知らせです。  中川知事をはじめ、歴代知事の強力なリーダーシップのもと、 政界、財界、県民が一丸となって取り組み、執念で手にしたものです。 昭和六十二年十二月小浜市文化会館において、 立錐の余地なく会場を埋め尽くして […]

千二百年の時空を経て

2017年1月発行  今年の干支は酉(鶏)。 酉は古代中国では、収穫した作物から酒を醸す 口の細い器(象形文字)のことで、酒の元の字。 成熟した状態のことを意味します。 また、酉は明け方に鳴き、新年も一番に鳴くため縁起が良いとされています。  弘法大師一夜の作で有名な三方の石観世音菩薩は、 右手先がない片手観音ですが、 これは、大師が制作中に夜明けを知らせる鶏の鳴き声が聞こえた […]

白隠禅師坐禅和讃

2017年1月発行 坐禅和讃(ざぜんわさん)は白隠仮名法語の代表作であり、 臨済宗の経本に必ず載っているよく知られた和讃であるが、 あるいは読んだことのない人もおられるかと思いご紹介することにした。 この和讃の制作年代は明らかではなく、 若いときの作という説と、晩年の作という説の二つがある。  坐禅和讃は「衆生本来、仏なり」で始まり、 中ほどに 「直に自性(じしょう)を証すれば […]