第61回(平成28年11月)入選作品

おとうさんきてくれたんだにゅうがくしき
        せんせいみながらさんどもみたよ

小学校一年生 時岡 千昌

寸 評

とても緊張する入学式の場面でお父さんを見つけた驚きとよろこび。
私は新一年生のがんばりと、初々しさに胸がキュンとなりました。
親子の絆を感じる作品です。


笑った波おこっている波やさしい波
        いろんな波は人間みたい

小学校六年生 浦谷 理恵子

寸 評 

作者は海辺近くに住んでおられるのでしょう。いつも見る波は
お天気によって表情が変わります。その波を人間に喩えたところに
作者の感性の豊かさを感じます。


妊婦体験意外と重いつらかった自分の母もこんな思いを

中学一年生 荒鹿 正也

寸 評

楽しそうな光景が想像されますが、辛さも味わいました。
その体験でお母さんの大変さや強さを知るきっかけとなりました。
ユニークな歌材で、母への思いやりが伝わる作品です。


女の孫は進路のあれこれ話しつつ折り鶴の羽をゆるゆる伸ばす

小浜市 畑 志津子

寸 評

お孫さんが進路について語る中、作者にみせる将来への慎重な姿が
「ゆるゆる伸ばす」によくあらわれています。作者とお孫さんとの
信頼感がほほえましい一首です。


今の世の荒きを問えば打ち寄せる波は静かに太古の調べ

小浜市 内田 あき子

寸 評

悠久の営みである海に打ち寄せる波と現代の事象を
対照的に詠まれたところに作品の深さを感じます。
海を前にして作者の複雑な心境は次第にほぐれていったのでしょう。
読者に想像をふくらませる作品と思います。


【 撰 谷口 正枝 】