生と死はつながりをりて産小屋の隣に村の墓地のありたり
小浜市東勢 杉崎 康代
寸 評
人間の生と死の象徴である産小屋と墓地を作者にぐっと引きつけて
詠まれており、一から二句に実感が籠ります。素材自体にインパクト
があり「つながりをり」と捉えたところにこの作品の妙があります。
鯨尺を取出し女孫に話したり用途のことを曽祖母のこと
小浜市上中井 古谷 智子
寸 評
鯨尺についてお孫さんとの会話シーン。
なにげない中にむすびの「曽祖母のこと」が少女に伝えたい作者の気持や
家族の歴史を示しており、厳粛な思いで鑑賞しました。
法要を最後にこの地を離れゆく父母の墓石に雨降り頻る
小浜市堅海 領家 公子
寸 評
作者のやさしい気持がよくわかります。と同時に亡き父母の眠る
この地への離れがたい思いを断ち切って、これからも
頑張っていこうとする作者の静かな決意が読みとれます。
ふるさとは沓とほき日風ゆったりと行きつ戻りつ亡き母の声
小浜市竜前 宮崎 洋美
寸 評
お母さんへの懐かしさをふるさとのやさしいかぜにのせて詠まれました。
「行きつ戻りつ」に長い時の流れと、その間のいろいろな経験をされた
作者の心情の振幅が映し出されて心を打たれました。
子羊の形に似たるちぎれ雲童話のなかにひたり昼寝す
小浜市小松原 内田 静子
寸 評
下の句への意外な展開に驚きました。ふっとおかしみを誘うような
やわらかな雰囲気が魅力的です。作者の寛ひろいお人柄が感じられる一首。
【 撰 谷口 正枝 】