第59回作品

軒下にふくら雀の一羽きてまた一羽きて雪降りつづく

小浜市 玉井 令子

寸 評

何気ない日常の中に見つけた景をありのままにシンプルに
詠まれたところが魅力的です。作者のやさしい眼差しによって
詩情ある作品が生まれました。


山寺の石段登り振り向けば道の幅だけ海の見えたり

小浜市 竹村 祐美子

寸 評 

山寺へと急峻な石段を昇る作者。海の広さを「道の幅だけ」と
捉えたことでこの一首が活きました。


芙蓉の花露を含みてさきにけり一日の花よ哀れ気高し

小浜市 池上 千代子

寸 評

芙蓉は朝咲いて夕方にはしぼむ一日花。
「~よ」と語りかける作者に花へのやさしく深い思いが滲みます。


手仕事はわが生き甲斐のひとつなり体調の良き今朝は布裁つ

小浜市 山下 はる

寸 評

体調の良い今朝はおのずと意欲が出て前向きになれる。
むすびの「布裁つ」の具象がよく効いています。これからもお元気で。


ローカル線秋の陽ざしに吊革のひとしくゆれて山峡を行く

小浜市 山口 豊子

寸 評

旅の車内の吊革…よいところをみておられます。
その「吊革のひとしく揺れて」に平和でのどかな旅の風景が見え、
牧歌的な作品になっています。


【 撰 谷口 正枝 】