鯖街道「針畑越え」の見所 Ⅲ【針畑峠】

2018年11月発行

若狭上根来(小浜市)から近江小入谷(高島市)へ越す古道根来坂は、最近鯖街道の一ルートとして

広く市民に親しまれるようになってきた。この坂のピークに位置するのが針畑峠( 835m )で、

元亀元年(1570年)、越前朝倉攻めの織田信長に従った徳川家康が

この峠を越えて京へ帰陣したことが伝えられている(若狭国史)。

 この峠へ行くには、上根来林道を八合目当たりまで登ると北側に広く若狭湾をのぞむ

展望所(ベンチあり)に着く。左(東)側の山道には京都への標識があるから車を止めて

この古道を登っていけば約20分で目的の針畑峠に着く。

峠は広場になっており、かつてはブナの大木が枝を広げ夏の日差しを遮ってくれていたが、

現在はその勢いもなく、まもなくその一生を終えるのではないかと案じられる。

 広場の南西側には地蔵尊を祀る祠が存したが、平成30年秋の台風で吹き飛ばされ、

中に安置されていた地蔵尊は野ざらしになってしまった。

地元に再建の動きはないものであろうか。また、峠の西側一段高い場所には

高さ約1mの花崗岩による一石一字塔が建っている。施主は針畑の住人で、

寛政9年(1797年)7月の文字が彫られている。牛又は馬によってここまで運ばれたものであろうか。

いずれにしてもこの峠が200年以上も前から交通の要衝であったことが伺える。

 峠から左(東方向)へは百里ケ岳山頂へ続くルートで、京都を目指すなら峠を越すよう直進することになる。

鯖街道歴史研究会   杉谷 長昭