重患の人よ必ず癒へ給へ
ドナーを果たしし孫のためにも
(歌集 秘境の旅より)
小浜市雲浜 塩谷 トミ子
寸 評
立派にドナーを果されたお孫さん、
作者はドナーの手術の無事をどんな思いで祈られたことか。
臓器提供者にも必ず癒へよと祈る作者の心、痛い程伝って来る重い歌。
冬の陽にきらめく岩間を流れゆく
渓谷の水に山女のよぎる
(歌集 田村の流れより)
小浜市和多田 宇多 蔚乃
寸 評
山女は清い流れの岩間に凄むといふ。
山女が水をよぎりいく姿に目を凝らす作者。
山紫水明な里に住まわれる作者が羨ましい。
誰よりもあなたが傍に居てほしいと
老いたる姑はわが手を握る
(花集 花あかりより)
小浜市山手 加納 暢子
寸 評
加納家の姑さんは実の娘の様に作者を頼り切っておられる。
「あなたが傍に居てほしい」これは姑との日々のすべてを物語っているあたたかい歌。
当分は来ること無からむ助っ人の
子は帰りゆく稲刈り終えて
(歌集 うぐいすの里より)
福井市花野谷町 山口 元子
寸 評
稲刈りの手伝いに戻ってくれた息子さん作者はどれだけ嬉しかったことか。
稲刈り終えて帰りゆく息子さんの車に作者は礼をしているそんな姿が想像されます。
【 撰 池田 和栄 】