わが病の癒ゆる日は何時梅の木に
問ひつつ梅のつぼみを見上ぐ
上野 岡本 澄子
寸 評
暖かくなり、梅の花が開く頃には、きっと恢復される事でしょう。
一日も早いご恢復をお祈りします。
振り向けば見送りくるる母のゐて
とりわけさびし割烹着の白
（ＮＨＫ全国短歌大会に秀作）
清滝 田所 芳子
寸 評
母を想う時には、いつも白い割烹着が浮かぶとのコメントがありました。
母の追憶を白い割烹着で言った所がお手柄。
歳重ねし節目に何か手習いと
しぶきを上ぐる午後のプールに
上竹原 山口 豊子
寸 評
作者は八十寿を迎へられました。
まだまだ若しと、新しい事に挑戦する事に決め、
それに向かって勵んでおられる。
常に前向きに生きておられる作者。ガンバッテ！声援を送ります。
ジャングルと呼ばれて猫の額なる
庭に一輪薮椿咲く
中井 信谷 冬木
寸 評
薮椿が一輪ポッと咲いている。
厚ら葉が茂る中にその一輪が灯をともした様に見えた事でしょう。
一輪だからこそ作者の目を引いたと思います。
冬空に熟れて揺れゐる蜂屋柿
取らぬが儘(まま)に雪かずきをり
おおい町岡田 堀口 寿々喜
寸 評
まっ赤に熟れた蜂屋柿が木に残っている。
高齢化が進んで取る人が無いのか食足りて取らないのか色々想像します。
取らない儘、雪を被ってゐるのは寂しい風景です。
【 撰 池田 和栄 】