2014年1月発行
正月二日に、それぞれ自分の仕事のし始めをすることが、
日本の長い伝統の風習として残っている。正月三日は休んで、
四日から仕事をするしきたりもいまだに残っているようだ。
二日には「初荷」といって商売を始める習わしは古来からあるが、
事の始めの習い事の年中行事の一つに「書初め」が現在でも広く行われている。
最近若い人たちの中には旧来の故事にこだわらず、
正月休みを利用して海外旅行に出かける人もあるが、
書道に熱心な人たちは「書初め展」や「献書会」「どんど焼き」など
新しいやり方を取り入れての行事お盛んになってきている。
文字を創造した中国では、言葉の記録・意志の伝達のために
文字が考えられたのではなく、一字一字が人間に幸いをもたらし、
また災いをもたらす神や妖鬼のような崇敬対象とした「言霊思想」から、
その祈りの形を表したものから出発し、それに祭祀のことや、
生活のための占いをして神の啓示を受けたことなどから、
中国人の思想の根底には今でも文学を神聖視する思想が受け継がれ、
文字の書かれた反故は踏まない、文字を書いた紙は不浄の場所に
使用しないというような習慣が残っているとのことである。
書初めの句は必ずしも吉祥の言葉に限らず、
その人のその新年にかける志や目標とか、願いの言葉、
座右の銘などを墨痕鮮やかにしたためることで、
新しい年を迎える心構えにしたいものである。
円明寺住職 笹川真照