除夜の鐘「百八の鐘」

2013年12月発行

 大晦日の夜、全国各地の寺院で除夜の鐘が打ち鳴らされる。

夜のしじまを破って響き渡る鐘の音は、古き年の終わりを告げる風物詩として

「百八の鐘」ともよばれている。「百八」の数字は、

人間の持つ妄想や欲望の数を挙げたものであるとされている。

その数え方は様々であるが眼・耳・鼻・舌・身・意という六つの対象を把握するとき、

好・悪・平(非好非悪)の三つがあり、十八となる。

その一つ一つに染と浄のふたつがあって合計百八の煩悩になるという説である。

 また、別の数え方があって、前記の人間の感覚器官に、

快感(楽)と不快感(苦)とそのどちらでもないもの(捨)の三種の感受があり

計十八、また、好・悪・平の三種があって計十八、あわせて三十六となる。

これに過去・現在・未来の三種があるから合計百八となる。

 「百八」という数は数珠の珠の数にも用いられているが、

人間の生来持っている煩悩を少しでも減らそうと念じ、

読経しながら百八の珠を繰っていくので念珠とも称しているのである。

 このように、人間の持っている煩悩を、新しい年を迎えるに当たり、

洗い流そうとの願いを除夜の鐘に託した古来の風習が「百八の鐘」である。

円明寺住職 笹川真照