入山の式に集へる檀信徒団扇太鼓の音高らかに
小浜市上竹原 山口 豊子
寸 評
入山式の様子を詠まれました。入山式檀信徒あげての村の祝賀です。作者の家は総代をつとめられた。長い年月準備をされ、今日の日を迎へられた喜こびが団扇太鼓にあらわれていて胸が熱くなる様な歌。
できるなら長病みせずに逝きたしと 思ひてをりぬ歳かさね来て
小浜市谷田部 岡田 満子
寸 評
この歌を読んだ人は誰もが頷くと思います。私もそうだと!作者は人情の機微に触れた歌を詠まれました。又、米寿を既に越へられた方と思います。お元気で長寿されます様に。
小浜場所を明日に控へて力士の旗
色とりどりにはためき合へり
小浜市飯盛 古谷 擴子
寸 評
小浜に相撲がやってくる町は大騒ぎでした。それを明日に控へて力士の旗の前を通った作者、わくわくしたのは作者だけではなかったと思います。「はためき合へり」に気力が漲っています。
抜き来たる太き大根
みずみずし鰤と炊きあぐ鼈甲(べっこう)色に
小浜市多田 山田 弘子
寸 評
「抜き来たる太き大根」と大胆な一、二句に始まり「鼈甲色に」と思い切った比喩表現、語句の斡旋が新鮮だったので功を奏した。なかなか臨場感のある歌。
降る雪に埋もれし庭の石南花(しゃくなげ)は
うらら春陽にほころび初めぬ
小浜市小松原 宮川 なを子
寸 評
今年の大雪に大事に育てている石南花にどれ程気を使ったことか、漸く陽春がうららになるにつれ石南花の蕾も膨らんで来た。作者の安堵と喜こびが伝わって来る。
【選 池田 和栄】