小浜病院・薬草園から⑩  一枚の葉でも十分甘い・アマハステビア

アマハステビア(Stevia rebaudiana)は、

南米パラグアイ原産の多年草です。

中国名は「甜菊(テンギク)」。

平均気温二十度前後の南緯二十三度付近に自生しており、

日本では戸外での越冬がやや難しい植物です。

葉に含まれる成分は主としてステビオサイド(stevioside)と

レバウディオサイド(rebaudioside)という配糖体で、

前者は砂糖の百五十倍、

後者は二百五十倍ほどの甘さがあります。

ただし、それらの含有量には個体変異がかなりあって、

市販されている株の成分比率は通常7:3という割合で

前者が多く含まれているのが一般的です。

最近では天然甘味料としてガム、清涼飲料、氷菓などに用いられていますが、

濃度が高いと苦味を感じるようになります。

家で少量を用いる場合は焦げない程度に炒ると、

酵素が失活して爽やかな甘さになります。

若い頃に台湾旅行中、台中から合歓山へ登る途中の

埔里(ホリ)という街の土産物屋で、「甜菊」の袋が目に留まりました。

少し口に入れると、飛び切りの甘さに驚きました

(後日の分析で成分比が5:5判明)。

聞くと、近くの少数民族が栽培したものと判ったことから、

後日台湾の友人に交渉してもらって“生きた株”を入手しました。

以来、遺伝子が変異しないよう挿し木繁殖して継代し、

薬草園でも荷造りシートの被覆という簡単な防寒対策だけで元気に育っています。

              小浜病院薬草園管理アドバイザー 渡辺 斉