雲龍丸の雄姿ふたたび

全国一の歴史と伝統を誇った、

旧小浜水産高校(現若狭高校)の六代目実習船雲龍丸が、

二〇一八年ロシアに売却され、

大正八年(一九一九)に竣工した初代雲龍丸から

数えて九十九年の歴史に幕が降ろされました。

この中には、二代目が戦時中小浜湾に停泊していた、

 帝国海軍の第十一水雷戦隊と小浜の街を結ぶ

通船として徴用されていたという、

 数奇な運命が刻まれています。

ところが、雌伏三年。今年(二〇二一)五月県や関係者の尽力で、

七代目がその名前を引き継いで誕生しました。

 雄姿ふたたびです。規模こそ小型化していますが、

 海の地形やプランクトンなどの生き物を調べる水中ドローンや、

 水温、塩分濃度を測定する最新の機器を備え、

 より科学的な海洋教育に威力を発揮するものと期待が高まります。

六代目などの大型船の時代は、

 ハワイ沖でのマグロ延縄実習船として活躍していたため、

 神奈川県三崎港を拠点としており、

 小浜ではその姿をほとんど見ることは出来ませんでしたが、

 七代目雲龍丸は小浜港を母港とするため、

 市民にとってはより身近な存在となり、親しみが湧きます。

海は無限の宝庫です。

県立大学海洋生物資源学部をはじめ、県栽培漁業センター、

 国の研究機関や漁業団体などと連携して、

 本県の水産業発展に大きく貢献してほしいと、願わずにはいられません。

                       若狭の語り部 網本恒治郎