春と秋、鳥の道を通って野鳥は繁殖地と越冬地を行き来する。
野鳥の捕獲が法律違反でなかったころ、
人は日々の糧を得るため、鳥の道に罠を仕掛けた。
その道は、どこにあるのだろうか。
大戦前後の航空写真をみると、
人里離れた山の尾根ちかくに、いくつもの筋が並ぶ場所がある。
筋のように見えるのは藪を開いてできた通路で、
それに沿って何枚ものかすみ網を仕掛ける。
網は細く丈夫な糸で編まれていて、鳥には見えにくい。
渡り鳥たちが尾根を越えていくのを捕らえるために、
鳥の道を探しあて、木を低く刈り、網を張って鳥を待ったのだろう。
先人たちの知恵は今、野鳥の調査研究に役立てられている。
渡り鳥がどのようなルートを使うのか、
個体数の増減、寿命といった基本的な情報を集め、保全につなげている。
杉本 素子