艇長は大変筆まめで、多くの手紙があちこちに残されている。
この一文は、結婚を前に明治四十年十二月二五日、父にあてた手紙で、
つづら折りの台紙に次子の絵とともに張られてある。
拝啓
去る二十二日東京にて一寸章に会
合致し同日夕発、途中京都
兄上宅にて終日遊び 昨二十四日
無事呉着 赴任仕候 先
は取敢えず御知らせ 一月三日の挙
式その他の事柄は 今回転任につき
少しも変ぜず候事故 一月二日
には京都にて拝眉 万縷申し述
べく候也 祈御健康
二十五日 呉 春風
勉
御父上様
膝下
結婚式を間近に控え、心浮きたつ頃の艇長の筆跡にその心情がうかがえる。
次子夫人の女学校時代の絵は精緻で美しく、才色兼備と謳われた人柄が偲ばれる。
佐久間記念交流会館運営委員 小堀友廣