ウグイスといえば、日本人であればだれでも知っている鳥だろう。
古くから数々の歌に詠まれ、菓子の名前になるなど、
ひろく愛されてきた。代表的なさえずりとして、
ホーホケキョのほかに、ケキョケキョケキョ…と続く「谷渡り」が知られる。
さえずりに名前がつくことはまれなことで、
ウグイスがいかに身近であるかを物語っている。
そんなウグイスが減っているのではないかと、
研究者の間で話題になっているのをご存じだろうか。
その理由について、シカが増えたことに関係があると考えられている。
食う食われるの関係にないシカとウグイスはやぶを生息地とする種である。
黒田長久監修『日本の野鳥 巣と卵図鑑』によれば、
「笹薮、ススキ原などで(中略)株の間や灌木の茂み中に、
枯れた笹の葉やススキの葉で側面に出入り口のある球形の巣を作る」とある。
つまり、やぶは巣材や巣を作る場所として必要というわけだ。
しかし近年、やぶが減少している。
なぜならシカが個体数を増やし、
林床の植物を食べつくしているからである。
かつて、森林の林床には笹薮が繁茂していた。
しかし、シカが増えたことで笹薮は姿を消し、
林床に植物が見られないのが普通になってきた。
ウグイスはそのとばっちりを受けているのである。
同様のことが、若狭でも起こっている。
私の住む西津地区の低山にも多くのシカが生息し、
林床にはやぶがない。そしてウグイスの声も、
頻繁には聞かれない。
若狭の別の地域では普通に繁殖しており一安心だが、
今後シカによる食害の進み具合によっては
ウグイスが見られなくなるかもしれない。
生物は環境の影響を色濃く受けてしまうのが常である。
とはいえ、日本人の心と文化に深く根差したウグイスが
いつまでも生息する地であってほしいものである。
杉本素子