動き出す史跡後瀬山城跡の保存・活用事業

 小浜市街地の後背に聳える後瀬山に、

室町時代の大永二年(一五二二)若狭守護・武田元光により城が築かれ、

山麓には守護居館も整備されました。

丹後街道と小浜湊を抑える要害の地に位置していました。

昭和六十二年から六十三年にかけて、

小浜市による調査が実施され、石垣をはじめ、

郭、竪堀、土塁、築山や建物跡など

若狭地方で最大規模の城郭が確認されています。

平成九年に後瀬山城跡が国史跡に指定され、

同二十八年には居館跡も追加指定されました。

令和三年度からいよいよ十年計画で、保存と活用整備事業が動き出します。

 ここは、重要伝統的建造物群保存地区でもあり、

古い町並や寺社等が数多く所在しています。

史跡の歴史的価値を損なわないよう配慮しながら、

これらと有機的な連携をめざすものです。

守護居館の復原は今のところ視野に入っていないようですが、

居館跡に設置を検討するとされるガイダンス(案内)施設の早期具体化を図り、

武田氏に関する遺跡の展示公開や体験学習機能に加え、

後を引き継いだ京極氏、酒井氏による治世の歴史的変遷に

触れられる内容のものを期待したいと思います。

令和四年には後瀬山城築城五百年の節目を迎えます。

武田氏の本家惣領と言われ、

代々弓箭故実を伝承する若狭武田氏を、

全国に向け発信するまたとない機会と考えています。

                        若狭の語り部 網本恒治郎