関の楊貴妃桜

2019年4月発行

楊貴妃桜は、旧上中町関集落の、花石山福乗寺境内に咲く名木で、

昭和三十六年に町指定の天然記念物となりました。


 サトザクラの一種で、例年四月中旬に八重咲きで淡紅色の花を咲かせます。

その名のとおり艶麗そのものであり、在野の植物学者であられた旧三方町の今井長太郎先生が、

「福井県下で最も気品のある桜」と評されました。

樹齢は二百年と言われ、幹の根回りは二m、樹高八m、枝張り東西十二mの老木でした。

ところが、昭和の後半より急に樹勢が衰えはじめました。


 そこで、水上勉先生のお声かけもあり、永江秀雄さんが昭和六十二年、

桜守として有名な京都の佐野藤右衛門先生に老木の再生をお願いしました。

そして、佐野先生のご厚意によるご指導のもと、区民総出で、この桜を何とか守ろうと、

桜への治療が行われたのです。


 区民みんなの思いが実り、楊貴妃桜の根元からは親を支える子のように新しい枝が芽生え、

今では再び毎年春に美しい花を咲かせてくれるまでになりました。

佐野先生は、「珍しいほどの老木だが、樹勢そのものは弱っていないので、あと百年は大丈夫」

と言われました。


 さらに四半世紀の時間が過ぎて、平成二十二年、再び佐野先生にお越しいただき、

さらなる桜の環境整備を区民みんなで行いました。

先生は、「全国でもこれほどの楊貴妃桜はない」と絶賛してくださいました。

 こんな楊貴妃桜は、わたしたち関区民の誇りであり宝物であります。

若狭町 関区