第49回入選作品(平成25年8月)

潮騒の近く聞こゆるこの町で
      終の住処をオアシスと言ふ

小浜市雲浜オアシス内 坂下 富子

寸評

安住の終の棲家へ辿りついた安堵や覚悟の中に一抹の淋しさが
読みとれます。そんな作者の気持ちを波の音が日々慰めてくれるのです。


のどかなりし若狭の里は変はりゆき
        高速道の青田をわたる

小浜市山手一丁目 池上 千代子

寸評

変わりゆくふる里の景を詠まれました。開発と懐旧のはざまに作者の心は揺らぐのです。


良きことを聴かぬにこのごろ耳痒し
        この耳わたしの何なのだろう

若狭町下吉田 奥本 守

寸評

体の一部「耳」を諺を使ってユーモラスに読まれました。
下の句の問いかけも軽妙で力量を感じました。品位ある作品。


病む友は健やかにして喜寿迎え
      酒は呑めぬとお茶で乾盃

小浜市城内 加地 弘忠

寸評

友のお元気な頃は酒を酌み交わす間柄だったのでしょう。
養生に励み喜寿を迎えられた今日は、ささやかですがしみじみ気持ちの通うお祝いとなりました。


囀りの降るがに聞きて草をとる
      小鳥の巣作り今がたけなわ

小浜市飯盛 池田 和栄 

  寸評 

「降る」「たけなわ」と巧みな言葉の幹旋が作品に臨場感を醸しだしています。


【 撰 池田 和栄 】
【 撰 谷口 正枝 】