踊る玄白

2017年6月発行

杉田玄白、自画像と賛<明年八十翁、九幸老人> (早稲田大学所蔵)

『解体新書』を刊行し西洋医学を拓いた杉田玄白は小浜藩医でした。

また、その蘭学導入の苦心を述べた自伝『蘭学事始』は、

福沢諭吉をして読むたびに落涙せしめたといわれています。

今年は玄白が亡くなって二〇〇年ですが、

少し違った視点から人間玄白を見てみます。


 七十九歳の時、九死に一生を得る大病をしますが、

病後の午睡時に見た夢を自ら描いたのがこの

今様をうたい踊る「玄白自画像」です。

画の上に、

「偽の世にかりの契りとしりながら ほんじゃと云ふにだまされた ここは狐の宿かひな

 コンコン」と洒落た今様の賛を書いています。 

 古希を過ぎても医学者としての多忙の合間に、

連歌や俳句に源氏物語、絵や狂言を習っています。

この絵はその「遊」の精神の発露ともいえます。

(嘉)