第39回入選作品(平成24年10月)

オスプレイの音もかくやと思ふなり
          朝の未だきに草を刈りゐる

中井   信谷 冬木

                          

オスプレイの騒音を草刈機に似通せて詠んだ着想に発見がある。
それにしても沖縄県民には迷惑なことだ。


大空に熊の親子に似し雲の
          形変へつつゆるりと流る

生守30-31  佐野 鈴子

                          

今、熊の出没が世間を悩ませています。形の変りやすい雲を熊の親子に似ると捉へた作者の眼にユーモアがあります。


旱天になぜ這ひ出しみみずらよ
          舗装道路に乾涸びてをり

清滝102 田所 芳子

                          

今年の暑さは格別だった。「旱天になぜ這ひ出しみみずらよ」に 小動物に対する作者の温かい目差しがある。


露ふくみほんのり紅さす茗荷の子
          やっこの薬味にきざみてをりぬ

和多田1-4 宇多 蔚乃

                          

茗荷叢に生えている茗荷の子の何とも言えない優しい色、それを薬味に刻む作者の手元から何とも言えないいい香りがします。 食欲そそる歌。


庭に生ふ蓬匂へり三十で
    逝きたる母の香につながりぬ

下田28-17 小堂 裕子

 評 

蓬には香氣があります。餅草でよもぎ餅を作ってくれた母を思い出している作者。年を重ねる程に母を思う心が読者に伝わります。


【撰 池田 和栄】