湧水の里の水辺景観

2015年3月発行

琵琶湖畔に重要文化的景観に指定された湧水の里がある。

それは高島市の新旭町(しんあさひちょう)にある

針江(はりえ)地区と霜降(しもふり)地区のことで、

このあたりは地下に安曇川(あどがわ)の伏流水が流れているため、

穴を掘れば水が湧き出てくるという湧水の里になっているのである。

湧水量は一日に三千五百トンに達し、

水温は常に十三度前後に保たれているとか。


 湧水を利用するための施設はここでは川端(かばた)と呼ばれており、

今でも百八ヶ所の川端が使われているという。

その仕組みは、まず壺池(つぼいけ)と呼ぶ丸い井戸から水を湧き出させ、

その壺池の中の水は飲用や食べ物を冷やすことに使われる。

壺池をあふれ出た水は次の端池(はたいけ)に入り、

ここの水は洗いものなどに使われ、

食べ物の屑などは端池で飼っている鯉に食べさせる。


 そして端池を出た水は集落内に作られた水路に入り、

さらに川に入って琵琶湖に注ぐという仕組みになっている。

その水路や川にはうらやましくなるような澄んだ水が流れていた。

地区の場所が分からなかったので車で探しまわり、

まさかこんな所にと思うような町の中でやっと発見したのだった。

瑞雲院住職 杉本玄海