九合目に来て垂れ下る登り綱
掴む辺りの結び目を追ふ
小浜市和久里 岩本 和子
寸 評
作者は登山家、九合目まで登り詰め、あと一歩。急峻な岩山が浮かびます。登り綱は命綱「掴むあたりの結び目を追ふ」に切迫感と緊張感が伝わります。
藻草焼く白き煙のたつ朝(あした) 海水浴の客待つに
小浜市松ヶ崎 松崎 真理
寸 評
海水浴のシーズンが近づいて来ました。海岸の清掃に砂浜の藻草や流木など燃やしているのでしょう。浜辺から白い煙が立ち上っている情感深い風景です。
誕生日に遠住む娘(こ)よりのプレゼント
八十路越えたる今年も届く
小浜市深谷 村上 律子
寸 評
娘をもつは有難いものです。お母さんの誕生日を忘れる事なく毎年送ってくれるプレゼント、八十を超えた今年の誕生日にも届き、宅急便を受取る作者の笑顔が見える様。
砂浜にたどりつきたる流木の
骨身細りて初夏の日を浴ぶ
小浜市駅前町 津田 條栄
寸 評
やっとこの浜についた流木の安らぎが伝わって来る様です。作者は流木の「骨身細りて」と、波にもまれ風雪にさらされた長旅だった流木を哀れんでいる暖かい目差しをかんじます。
【選 池田 和栄】