
平成二八年(二〇一六) 、
滋賀県草津市在住の西依進一氏は小浜市に西依家文書を寄贈されました。
山崎闇斎に始まる朱子学(崎門学)を、
小浜藩校順造館や京都望楠軒で教授してきた西依家が、
代々大切に伝えてきた資料群です。
その中に、
初代西依成斎が愛用したとされる鳳足石硯が遺されています。
硯の背面には儒者であり京都の書店・風月堂五代目当主でもある
沢田重淵(一斎)による延享二年(一七四五)とある撰文が刻されています。
その撰文には、
この鳳足石硯は小浜藩士・山口春水が師の
望楠軒講主・若林強斎に贈ったものであるが、
師亡き後、新たに講主となった成斎に譲られたとあり、
硯とともに京都望楠軒に拠る春水・成斎・重淵の交誼が
不朽であることを願っています。
そしてこれは学問(崎門学)に真摯に取り組むという誓いでもありました。
鳳足石硯に御銘が付けられてから六三年後のことでした。
小浜古文書の会 中島嘉文

