第35回(平成24年6月)入選作品

柏木の若葉が萌ゆる中にして
     病(わく)葉(らば)は散る定めなるかも

小浜市雲浜 塩谷 トミ子

                          

柏葉には摂理があるのですね。若葉が育つのを見定めてから古い葉が散っていく。
自然界の神秘さを思わせる歌です。


 朝ドラの世代を生きし若き日よ
          哀(かな)しみを重ね涙止まらず

小浜市多田 山下 はる

                          

梅ちゃん先生の朝のドラマには、作者の戦後を生き抜いて来た若い日々が重なり、 色々なことを思い哀しかった日のことを作者は思い出しています。


 砂浜にハマダイコンの花ゆれて
          夕映えの海長くみてをり

小浜市東勢 杉崎 康代

                          

一幅の絵をみている様な安らぎを感じます。一日の仕事を終えて夕映えの海をみる
「長くみてをりし」に安堵感があります。情感深い歌です。


木通(あけび)の花のあかく咲き
    初む藪蔭を蜂は飛びゐるわが城として

小浜市飯盛 谷口 正枝

                          

木通の花をめぐる蜂みつ蜂でしょうか。木通の実や薮の様子まで連想され臨場感があります。


後期高齢者になって喜ぶこの私胸の奥には空洞もあり

                       小浜市遠敷 川嶋 和雄

 評 

後期高齢者と言われるまで健康に生きてこられた事、作者自身を祝福しています。
年を重ねても心の中には誰でも不安やうつろさはあると思います。


 【選 池田 和栄】