柏木の若葉が萌ゆる中にして
病(わく)葉(らば)は散る定めなるかも
小浜市雲浜 塩谷 トミ子
寸 評
柏葉には摂理があるのですね。若葉が育つのを見定めてから古い葉が散っていく。
自然界の神秘さを思わせる歌です。
朝ドラの世代を生きし若き日よ
哀(かな)しみを重ね涙止まらず
小浜市多田 山下 はる
寸 評
梅ちゃん先生の朝のドラマには、作者の戦後を生き抜いて来た若い日々が重なり、 色々なことを思い哀しかった日のことを作者は思い出しています。
砂浜にハマダイコンの花ゆれて
夕映えの海長くみてをり
小浜市東勢 杉崎 康代
寸 評
一幅の絵をみている様な安らぎを感じます。一日の仕事を終えて夕映えの海をみる
「長くみてをりし」に安堵感があります。情感深い歌です。
木通(あけび)の花のあかく咲き
初む藪蔭を蜂は飛びゐるわが城として
小浜市飯盛 谷口 正枝
寸 評
木通の花をめぐる蜂みつ蜂でしょうか。木通の実や薮の様子まで連想され臨場感があります。
後期高齢者になって喜ぶこの私胸の奥には空洞もあり
小浜市遠敷 川嶋 和雄
寸 評
後期高齢者と言われるまで健康に生きてこられた事、作者自身を祝福しています。
年を重ねても心の中には誰でも不安やうつろさはあると思います。
【選 池田 和栄】