寛文六年(一六六六)、第二代小浜藩主酒井忠直は、
宮川産紫石で斵られた硯を、
伊勢神宮・出雲大社など二五の大社と
東大寺や寛永寺など一四の大寺に奉納します。
上の写真は二五社の一つ下総国(千葉県)一の宮であった
「香取大明神社」(式内社・現、香取神宮)に奉納されたもので、
黒漆塗りの硯箱には
「奉納 若狭国紫石硯 一面 酒井修理大夫忠直」と記されています。
硯の表面には「紫潭祥雲」の四字が刻まれ、
裏面には、林家二代目林鵞峰の撰文が載せられています。
そこには先代忠勝の勤労が今の小浜藩を創ったことへの感謝とともに、
「夫硯は寿者なり」とし、
奉納硯の「永伝千年」を国家繁栄のもとに願うと記されています。
この三九ヶ所に奉納された紫石硯は現在も多くの寺社で大切に保管され、
日光東照宮や熱田神宮、永平寺などでは展覧会にも出品されており、
紀州の熊野神社に奉納されたものは、
現在和歌山県指定文化財です。
小浜古文書の会 中島嘉文