2013年10月発行
秋の初めは萩の花。
秋の深まりを感じるものにホトトギスの花があります。
草丈の短い小ぶりのものもありますが、
長い茎がしなやかな曲線を描いた先に、
白地に赤紫の文様の花が咲いているのは殊に優雅です。
和装の女性がたたずんでいるような風情があって魅力的。
生け花や、お茶の席にも好まれる花ですね。
花自身がおしゃべりをしているような派手さではなく、
そっと控えて人の話を聞いてくれているような落ち着きがあるので、
その空間が和むのでしょう。
濃い緑の葉の先がかすかに枯れた色をおびているのに出会うと、
この季節の花ならではの美しさだなあと、花にも葉にも見とれます。
季節のめぐりのなかを生きていることが思われます。
小浜城址の石垣の近くには、小ぶりのホトトギスが咲いています。
百年前、二百年前のことを、きっと知っているのでしょうね。
りとむ短歌会所属 北野よしえ