宗教という文化が如何にして発生してきたかという問には、
明解に答えることは出来ない。しかし、いくつかの形態があって、
それらが絡み合って出来たものであることは間違いない。
日本における仏教であっても、発祥の地インドのそれとは異なるし、
伝わる過程の中国とも異なる。日本には日本独自のものがあるのは、
日本にあったものと伝わったものが合わさってできあがったからにほかない。
原始の時代に遡って、その原初形態をまとめてみることとする。
『アニミズム説』
原始人は夢を見る中で、もうひとりの自分の存在を意識した。
つまり眠っている自分とその自分から離れて遠いところに行く自分である。
肉体の自分はそこで眠っており、
そうでない自分は夢の中で遠いところに行っている。
当然ながら夢の自分は眠りから覚めれ、体に戻る。
この肉体から離れて自由に行動するのが、
第二の自己すなわちアニマ(空気、呼吸、生命、霊魂)であると考えた。
アニマは、一時的または永久に肉体を離れ、
人間だけではなく、風、河、星、天空等や地上の動植物や岩石その他の自然現象に、
独立して自由に宿ると考えた。
そこに、肉体と霊魂の二元論が生まれ、
霊魂に生霊と死霊、善霊と悪霊の区別が生じた。
したがって、このアニマは無数に存在し、
自然現象として活動し支配する。
この支配下にある人間は、
利害関係の上でこれと関係を持っておかなければならない。
ここに儀礼で生まれ、呪物崇拝(フェティシズム)となる。
この宗教形態がアニミズムである。
日本においても、山をご神体とする信仰があり、
古木をご神木とするのはこの類例ともいえるが、
アニマの概念とは異なりがある。むしろ、
菅原道真の悪霊が悪さをする類がこれに近い。
若狭文学会会員 鈴木 治