小浜湾に臨む川崎の台場浜公園の一角に
「世阿弥船出之地」と書かれた大きな石碑が建っています。
室町幕府三代将軍・足利義満の寵愛を受け、
能を大成させた世阿弥は、
生涯に四度も小浜に遊んだ義満の御供をして
小浜に来ていたようです。
七〇歳代の晩年、
六代将軍足利義教から罪を得て佐渡に流される世阿弥が、
わざわざ小浜からの出帆を願ったのは、
若いころからの小浜への愛着からとされています。
江戸時代の小浜は能・狂言が大変盛んで、
八幡宮の放生会などの祭礼では
都から招かれた能楽師の神事能を楽しみ、
また御城での能にも町民がしばしば招かれ、
武士も町人も共に楽しんだようです。
こうした能楽愛好の長い伝統をうけて、
昭和六二年(一九八七)五月に、
小浜市内外からの浄財を集めて
「世阿弥船出之地」の記念碑が建てられました。
小浜古文書の会 中島嘉文