小浜病院薬草園から 「解体新茶」の主役・ハトムギ

今は誰でもスマホを手放せない時代なので、

“お手玉”や“おはじき”を懐かしむ方は

団塊世代以上のお年寄りだろうか。

そのお手玉の中身が、

河原に生えているジュズダマの果実だった

ということを知る人はさらに少ないのかもしれません。

ちょっと面白い涙のしずくの形をしているので

、英名は「Job’s tears」 です。

「数珠玉」と呼ぶ日本人の感覚とのズレが興味深いですね。

解体新茶の主材ともなっている

ハトムギ(Coix lachryma-jobi  var. ma-yuen)は

その仲間で、インドや東南アジアで古くから食用および

薬用として栽培されてきたものです。

日本には享保年間(1716~1736)に導入され、

京都府下での栽培記録が残されています。

殻を取り去ったものが「薏苡仁(ヨクイニン)」で、

利尿、解熱、鎮痛、消炎作用などがあるとされています。

澱粉約50%、蛋白質15%、

コイクソール(有効成分の一つ)などが含まれていて、

最近ではお茶や味噌などの健康食品材としても

よく利用されていますが、

民間薬として疣(イボ)とりや肌荒れを防ぐ

といった効果を期待して服用している場合もあります。

 ハトムギとジュズダマには様々な違いがあります。

前者は一年草ですから、

毎年タネを播く必要があります。

花序は垂れ下がっていて、果皮は爪でも割れるほどで、

種子に含まれる澱粉は糯性(モチセイ)です。

一方、後者は多年草で、花序は垂直に立ち上がっています。

また果実はペンチが必要なほど硬く、

澱粉は粳性(ウルチセイ)でサラッとしています。

          小浜病院薬草園管理アドバイザー 渡辺 斉