かつて、若狭小浜は昆布とゆかりの深い地域でした。
中世には重要な港であった小浜は、
江戸時代以降、北前船の寄港地として、
様々な物や文化が行きかいました。
江戸時代の物産誌によると、北海道の松前などから運ばれた昆布は、
敦賀や小浜で船から荷揚げし、
小浜の商人が加工した後は若狭昆布と呼び、京などへ運ばれていました。
中でも「召しの昆布」は特別な食として知られ、
小浜の昆布商・天目屋は、小浜藩から命を受け製造・商いを生業としていました。
当家の由緒書によると、室町時代から一子相伝で製法を受け継ぎ、
将軍家や諸大名に献上していました。
名前の由来は、室町幕府八代将軍足利義政や江戸幕府三代将軍徳川家光に献上し、
召しあがったことから、高貴な人が召し上がる昆布という意味からついたようです。
また、狂言「昆布売」には、京の都で若狭の昆布売りが登場し、
召しの昆布をすすめる掛け声がでてきます。
現在の小浜では、昆布とのつながりは薄くなっていますが、
同様に北前船で運ばれてきた食材であるニシンを昆布で巻き甘辛く煮た
「昆布巻き」は伝統的な家庭料理のひとつです。
こうした北前船が紡いだ港町・小浜の文化財群は平成三○年に、
日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落~」に
認定されています。
御食国若狭おばま食文化館 学芸員 一矢 典子