2012年12月発行
小浜市松永地区の太興寺に栄松寺というお寺があります。
いまは無住のお寺ですが、
潜り戸のような山門が由緒を感じさせるお寺です。
ほとんど知られていませんが、
このお寺こそ松永小の前身である啓心校発祥の地です。
明治六年(一八七三年)、松永地区八ヶ村の公立学校として発足しました。
明治十四年に酒蔵を購入して新校舎ができるまでの八年間、
松永地区の学校でした。
字を読むことも書くこともできない人が大半であった時代、
始まったばかりの学校の教科は句読と習字(読み書き)の二教科でした。
「これからは学問の時代だ」といって、
食うや食わずの暮らしのなかで仕送りを続けた野口英世の母のように、
字を書くことも読むこともできなかった松永の親たちも、
同じ思いで子どもを学校に通わせたことでしょう。
新しい学校をつくるときには、苦しい暮らしのなかから
一銭、二銭と貧者の一灯が寄せれ、新しい時代を拓く礎となりました。
来年、啓心校が生まれて百四十年を迎えます。
せめて「啓心校(松永小)発祥の地」の立て札を山門の前に立てて、
人々の歩みを伝えては・・・・
と考えています。
二〇一二年秋 池河内 川畑 哲夫