第31回(平成24年2月)入選作品

女子駅伝県勢初の十五位だ思わずこぶしあげてバンザイ

小浜市遠敷  川嶋 和雄

                          

テレビの報道を歌に詠むのはむつかしいが、この歌は作者の喜びが読者に良く伝わってくる「思わずこぶしあげてバンザイ」この具象がよく効いている。


年明けの甍に残る雪塊に朝日耀ひ凍てを解かむ

小浜市和久里  岩本 和子 

                          

屋根雪がきらきら光っている光景は何とも美しいもの。やがて冬陽に照らされて解けるであろうと言う所を「凍てを解かむ」といった所にことばの発見があり、独特な感性をみる。


きはやかに航跡ゑがきゼット機は音も姿も冬空に消ゆ

小浜市多田  藤井 喜美子

                          

冬空の飛行機雲は空気が澄んでいるのでくっきりと尾を引く。大空に航跡を追ふ作者。一幅の絵の様で臨場感がある。


尼僧の立居振舞きびきびとそを憧れし吾が若き日よ

小浜市多田  山下 はる

                          

無駄なくてきぱきと働く尼僧。生き生きとして気持ちよくその姿を目標に日々勤しんで来られたであろう作者が浮かぶ。


凍み蒼き湖面を泳ぐ親子鴨水輪に触れつつ ひたすら従きゆく

小浜市東勢  杉崎 康代

                          

蒼き湖面は琵琶湖でしょうか。親子の鴨を想像するだに風光明媚。親鴨について小鴨の泳ぐ様子を「水輪に触れつつ」「ひたすら泳ぐ」と小鴨に対する視点がやさしい。