平家の落人集落

2011年9月発行

 私の暮らす松永川の最上流の集落池河内は、幼いころ「平家の落人集落」と聞かされていた。確たる証拠があるわけではない。ただ、室町時代にあたる文治三年に平景慶(たいらのかげよし)という武将から「自分が戦の褒賞として池河内を賜った」という池河内の名主当ての文書が近世まで残されていたというのだから、平家に縁のある集落であったのは事実であろう。明治まで残されていたという写しも、今は消失している。

 集落から三キロ程の上流に「三番滝」(さんばのたき)という落差三十メートル程の滝がある。昔から「滝壺に石を投げると大雨が降る」という言い伝えがある。滝壺の脇には小さな不動明王が祀られている。おそらく日照り続きの時の雨乞いの名残だろう。大雨と干ばつは農民にとって生死にかかわる大問題だった。人々に恵みを与える松永川の最上流の三番滝は人々にとってはパワースポットであったのであろう。「平家の落人集落」には様々な言い伝えが今も生きている。

(松永いきいきふるさと塾会長 川畑哲夫)