第50回入選作品(平成25年10月)

夢にすら会へぬが儘の征きし文
      慕ひ続けて古稀を迎ふる

小浜市飯盛 古谷 擴子

                         

子としての素直な心情が切々と伝わって来ます。特に下の句の
「慕ひ続けて」に長い歳月の痛い程の一念が感じられます。
余情ある一首。


生きてるぞと一番鴉の声を聞き
      よいしょとばかりに膝立て起きぬ

小浜市駅前町 津田 條榮

 

老いの身の生にまつわる悲哀と希望を具象をもってユーモラスに
表現され、共感を覚えます。これからもお元気で。


月明かりにゆうゆう猫の歩みゆく
        微かに落葉の音たてながら

若狭町末野 土阪 玲子

                         

実景でありながら幻想的なシーンを連想させる歌。
視覚・聴覚を駆使して静かに深まりゆく秋の風情を巧く詠まれています。


男衆の網打つかたはら吾ひとり
      シャデで鮎追ふ解禁初日

小浜市遠敷 中村 志津子

                         

鮎の解禁を待っているのは何も男性ばかりではない。
作者も女性ながら小さな漁具を使って鮎つりを楽しむ釣人なのです。
男衆の大掛かりな投網を横目でにらみつつ…。


たのしみは月のはじめのお小遣い
        何を買おうか考える時

おおい町名田庄三重 森 菜々美(小六年)

評 

はじめて短歌に挑戦。三十一文字にうまく収まりました。
少女の素直な気持ちをうたっています。これからも励んで下さい。


【 撰 池田 和栄 】
【 撰 谷口 正枝 】