潮騒の近く聞こゆるこの町で
終の住処をオアシスと言ふ
小浜市雲浜オアシス内 坂下 富子
寸評
安住の終の棲家へ辿りついた安堵や覚悟の中に一抹の淋しさが
読みとれます。そんな作者の気持ちを波の音が日々慰めてくれるのです。
のどかなりし若狭の里は変はりゆき
高速道の青田をわたる
小浜市山手一丁目 池上 千代子
寸評
変わりゆくふる里の景を詠まれました。開発と懐旧のはざまに作者の心は揺らぐのです。
良きことを聴かぬにこのごろ耳痒し
この耳わたしの何なのだろう
若狭町下吉田 奥本 守
寸評
体の一部「耳」を諺を使ってユーモラスに読まれました。
下の句の問いかけも軽妙で力量を感じました。品位ある作品。
病む友は健やかにして喜寿迎え
酒は呑めぬとお茶で乾盃
小浜市城内 加地 弘忠
寸評
友のお元気な頃は酒を酌み交わす間柄だったのでしょう。
養生に励み喜寿を迎えられた今日は、ささやかですがしみじみ気持ちの通うお祝いとなりました。
囀りの降るがに聞きて草をとる
小鳥の巣作り今がたけなわ
小浜市飯盛 池田 和栄
寸評
「降る」「たけなわ」と巧みな言葉の幹旋が作品に臨場感を醸しだしています。
【 撰 池田 和栄 】
【 撰 谷口 正枝 】