苦悩する神 その四

2016年9月発行

 若狭神宮寺は、神仏習合に関連して、二番目に古い文献に現れる寺です。

文献の内容は、神の身を離れて仏法に帰依したいというものです。

ここでは少し、神とは何かということを考察してみたいと思います。

 日本には八百万の神があると言います。

一方我々は、根本的な神として天照大神を考えます。

天照大神は、伊勢神宮の祭神です。

大国主命を祭神とするのが、出雲大社です。

両者の関係は、主従ではないと思われます。

ならば、神はそれぞれに存在してもよいのではないでしょうか。

 原始宗教の起源説には、次の諸相があげられます。

①アニミズム

②プレアニミズム

③アニマティズム

④ナチュリズム

⑤トーテミズム

⑥一神教

⑦シャーマニズムなどです。

この中で注目したいのが、トーテミズムです。

同一名の者同志が同族として集団を作り、名称を持つ。

この名称をトーテムと言います。

そしてこのトーテムは、人間の禍福を支配する呪力を持つとされます。

神的な存在です。そのため、儀礼が生み出されました。

これをトーテミズムと言います。

 若狭神宮寺を建立した和朝臣宅繼の曽祖赤麿は、

若狭比古神の直孫として文献(『類従国史後編』)に現れます。

赤麿は、「此の地、是我が住処」といい、

この地域に住む者たちの中心的存在であることを匂わせています。

ここから推理して、地域ごとに祖先が神として存在したと思われます。

天照大神は、天皇家の神であったと言うことです。        

若狭文学会会員 鈴木 治