第37回入選作品(平成24年8月)

姑御の使ひしならむ山椒木の
          手ずれ親しき擂粉木使ふ

下田  東 紀子

                          

「山椒木の擂粉木」で歌が決まりましたね。擂粉木で何を作られたのか
夕餉の菜が何だったのか想像したくなりますね。懐かしく貴重な歌です。


黄昏(たそがれ)の山路に白き朴の花
          エンジン止めればホトトギス鳴く

宇久  山本 義道

                          

天地自然の原風景を見る様な歌「山路に白き朴の花」「ホトトギス鳴く」
こんな風流な中に住まわれる作者は至福の限りです。


わが小屋に楽しげに住む猫家族
          すり寄りすり寄り餌をねだりぬ

雲浜一丁目 江口 典子

                          

作者の小屋に住む猫は野良猫でしょうか。「すり寄りすり寄り」に作者の
あたたかい目差しを感じます。猫は人につくと言いますね。


障害を撥(は)ね除(の)け犬と散歩する
          青年は朝の挨拶をして

おおい町岡田  堀口 寿々喜

                          

朝々を犬と散歩する青年の様子に障害を撥ね除けている様だと作者には
あたたかい目差しがある。朝の挨拶を欠かさずするといふ青年に「がんばって」と声援を送っている様だ。ほのぼのとする歌。


長病みし床臥す夫の慰めに
          登美子の秀歌を諳(そらん)じ和む

おおい町本郷 村松 恵美子

 評 

登美子記念短歌大会が近づいた頃の歌でしょうか。作者の御家庭は御夫婦共々歌を愛し作歌活動に勵まれて居られました。長病みのご主人に聞 かせたい歌は「いくひろ」の歌だったのか、御夫婦共々登美子を偲んで おられる様子が浮かびます。お大事に。


【 撰  池田 和栄】