
へしこはお茶漬けに限る。へしこをむしってお茶漬けの上に載せ、
サラサラッと口に入れる。
そうするとへしこのしょっぱさがご飯の甘さとお茶の中でうまく溶け合って・・・、
この後はどうしても文字では言い表せないのだ。お試しあれ。
へしこを食べる醍酸味は、そのへしこがほとんど無くなってからである。
食べる身がないと思ってもまだ案外残っているもので、
先ずは背びれ。背びれは、番外側であるので、焦げ目が付いて香ばしい。
そのうえ箸では取りきれない身がかすかに残っていて、
もう無くなってしまったと落胆している心に、
新しい希望を与えてくれる。幸せが二度来たようなものだ。
更に骨の間にもかすかに残っている。
これをちょんちょんつっついていくのは、
いじましい身には、是亦人知れず大きな喜びなのである。
書家 岸本三次

