2013年5月発行
主食に副菜、甘味や飲料にまで登場するゴマ。私達にとって身近な食材であ『ゴ
マ』は古くから「身体によい」とされ、昨今はその栄養成分の機能に期待がかか
る。
江戸時代、本草学者の人見必大が『本朝食鑑(一六九七年)』で、「黒ゴマは
腎(ここでいう腎は腎臓ではなく、生殖器やホルモンに当たる)、白ゴマは肺に作
用する。ともに五臓を潤し、血行を良くし、腸の調子を整える」と説いた。また、
同じく本草学者の貝原益軒も、『菜譜(一七〇四年)』の中で、「黒胡麻は服食と
すべし、上品の薬なり。(中略)飯にかけ、湯に入、菜にかけて食す。味よく性よ
し。朝夕食すべし。身をうるほし、虚を補ひ、気をまし肌肉を長じ、耳目を明らか
にす。中風によし。」としている。
名古屋大学名誉教授、大澤俊彦氏は「ごまの健康学」で、「毎日スプーン一杯程
度摂取することで、ゴマがもつ抗酸化作用や肝機能向上作用に加え、そのほかの栄
養素の働きによる相乗効果によって様々な効果が期待できる」と述べている。そし
て、具体的には、血中コレステロールのコントロール、がん予防、アンチエイジン
グ、アルコール代謝促進 (二日酔い防止)、女性ホルモン作用(乳がん予防)血液
機能の改善、高血圧の抑制、血栓予防、自律神経機能の改善、動脈硬化予防に効果
があるとし、「胡麻は身体によい」としている。
さらに、ゴマは日本食料理の見た目、味や風味に欠かせない食材でもある。『杉
田玄白先生の養生訓』と、それにちなんだバランスのとれた食事による病気予防の
考え方「医食同源」と相通じるものがある。
御食国若狭おばま食文化館 学芸員 齋藤光子