第78回 若狭の散歩道ミニ講演会
平成24年3月18日(日)
「壬生狂言」追跡―和久里融通大念佛狂言の世界―
講師:国立舞鶴高専人文学科教授 村上 美登志 氏
講師に、国立舞鶴高専人文科学科教授、村上美登志氏を迎え、
古くから和久里地区で6年毎の子と午の年に奉納されている「和久里狂言」
京都の壬生狂言に相通じる世界をやさしく解説していただきました。
☆講演会の内容を以下に少しだけご案内させていただきます。
和久里の西方寺に現在、伝承される壬生狂言の曲目は、次の九曲である。
①狐釣り(釣り狐)
②腰祈り
③寺大黒
④愛宕詣り
⑤餓鬼角力
⑥炮烙割り
⑦座頭の川渡り
⑧とろろ滑り(山端とろろ)
⑨花盗人
この曲目は、四月上旬に行なわれる三日間の上演中、毎日入れ替わり、中日には僧侶達による「大般若経」の転読が行なわれる。さらに毎日の午後には、「宝塔縁起」が朗読されるが、その出演者は全て小学生の男子に限られている。また、和久里では、この「融通大念佛」を単に「ミブ」と呼んでいる。
上演は、第二次世界大戦敗戦前の昭和十七年までは絶えることなく行なわれていたが、昭和二十八年の第十三号台風によって、面・装束・記録文書等を始めとする寺ごと全てが流失する大打撃を被ったため、しばらく(終戦後としては昭和三十五年に上演されたきり)絶えていたのであるが、昭和五十三年に和久里の人々の手によって再興された。この時より、従来の紙製面を廃し、区民自作の木彫仮面が三十余り制作され、今に至っている。前回の上演は平成十四年の四月に行なわれているので、次回の上演は平成二十年四月中旬が予定されている。
さて、ここで注目されるのが、本家本元の壬生寺にはない「和久里壬生狂言」の上演曲目である。それは、上記に示した①の「狐釣り」、②の「腰祈り」、⑦の「座頭の川渡り」の三曲である。
壬生寺は何度も焼亡しており、曲目の記録としては、江戸中期頃のものが現存最古のものになるのだが、そこにはおよそ六十曲の曲名が残されていて、①の「狐釣り」と⑦の「座頭の川渡り」はそこにも見えず、嵯峨釈迦堂、千本ゑんま堂等の曲目にも見えないものである。壬生寺焼亡以前の古記録には存していたものかも知れないが、現時点では和久里独自のものとなっている。
「狂言番組」の具体
「和久里融通大念佛狂言」は、六年毎の子と午の年に奉納される。演目内容は、以下の通りである(奉納年によっては、時間等の変更もある)。
初日<午前>「餓鬼角力」「花盗人」「炮烙割り」
<午後>「とろろ滑り」「座頭の川渡り」「愛宕詣り」
(宝塔縁起奉読)「狐釣り」「腰祈り」「寺大黒」
中日<午前>(宝篋印塔供養)(大般若経奉読)(宝塔縁起奉読)
<午後>「とろろ滑り」「狐釣り」「腰祈り」「炮烙割り」
(宝塔縁起奉読)「寺大黒」「餓鬼角力」「花盗人」
「座頭の川渡り」「愛宕詣り」
楽日<午前>「寺大黒」「座頭の川渡り」「愛宕詣り」
<午後>「狐釣り」「花盗人」「腰祈り」(宝塔縁起奉読)
「炮烙割り」「とろろ滑り」「餓鬼角力」
この番組内容からも理解されるように、初日の冒頭と楽日の最後の演目が「餓鬼角力」であるのは、「和久里融通大念佛狂言」の本質が、「施餓鬼会」を明確に意図したものであることが分かる。
さらに、「宝篋印塔供養」を含め、「宝塔縁起奉読」が三日間で五回も奉納されている。
これは、この地方の代官であった長井雅楽介が、出家を果たし、朝阿弥(沙弥朝阿)と号して、延文三年(一三五八)に建立した宝篋印塔(通称市の塔)の信仰に関わるものであった。
すなわち、この「融通大念佛狂言」を大きく捉えると、本質的には「施餓鬼会」の開催を目したものであろうが、その中に古くから地元の信仰を集めていた「市の塔」の供養を絡めているものでもある。それは、上述したように、初日・中日・楽日の午後に、市の塔に対する「宝塔縁起奉読」が計三回組み込まれ、さらに、中日午前には、「宝篋印塔供養」と「宝塔縁起奉読」が行われ、三日間で五度に亘って、市の塔の供養が成されていることからも理解されよう。
郷土文化を守る活動 〈郷土研究クラブ〉
小浜市和久里の学校では、ふるさと学習にがんばっています。
2012年2月23日地域の保存会の皆さんの応援を得て、学校で郷土研究クラブ「いきいき壬生狂言クラブ」の壬生狂言発表会が開かれました。
この日のために24名の子供たちは1年間練習してきたそうですが、練習の甲斐あってか自信に溢れた演技と、心に響くお囃子でした。
子供達の熱演の様子はこちらでチエック!!
2月23日の発表会では「餓鬼角力」「花盗人」が演じられました。どちらもわかり易くてコミカルな動きが楽しい作品です。子ども達の大人顔負けの熱演に会場中は拍手喝采でした。
【餓鬼角力あらすじ】
鬼対餓鬼(亡者)の角力(相撲)勝負。
いつもは鬼が四股を踏むだけでひっくり返る餓鬼達ですが、地蔵菩薩の祈りによって鬼たちを次々に投げ飛ばしてゆきます。
鬼達のふがいなさに怒った閻魔大王。地蔵菩薩に勝負を挑むもあっさり打ち負かされてします。
地蔵菩薩の霊験を分かり易く 説くためのお話です。
【花盗人あらすじ】
大尽が共を連れて花見遊山に出掛けます。
花を見ながら大酒を飲み、酔い潰れてしまいます。酒を注ぐだけで飲ませてもらえなかった共は、ここぞとばかりに酒を飲みやっぱり酔い潰れてしまいます。そこへ現れた盗人をなんとか捕まえたものの、全員酔っぱらっているので結局にげられてしまいます。
大尽は大金を取られた上に、盗人にも逃げられてしまうのでした。
泥棒を捕まえてから縄を綯う、「泥縄」の面白さを表現した作品です。