第38回入選作品(平成24年9月)

ほととぎすの夜半にも鳴くを知り
          眠れぬ床にたまたま聞きて

堅海 領家 公子

 

時鳥(ほととぎす)は夏鳥、夜半に醒(さ)めていたら鳴いたと言う。時鳥は
鳴き方に特徴があるのですぐに分かる。読者である私も始めて知りました。


祈りとふテーマ掲げて華道家の
す向日葵はなべて上向く

青井  竹村 祐美子

                          

華道家は名前を聞かなくても前野博紀さんの華だとすぐ分かる。それ 程有名、豪快さを挿す向日葵で「上を向いて挿す」ここに着眼した作 者は華道家を確実な眼で捉えている。


墓経に玉の汗おく若き僧に
          そっと日傘をさし掛けてをり

遠敷    青木 哲子

                          

猛暑の中での墓経は厳しいことです。作者は僧の玉の汗をみて、そっ
と日傘 を差しかけた。作者の若い僧に対しての労(ねぎら)いの気持ちが 伝わります。


みんみんと泣いているのか蝉たちは
          たった六日の命は短いと

新小松原   船井 真愛

                          

作者はせみの一生(ひとよ)のはかなさを「たった六日の命」と詠(よ)んでいます。蝉はは かないものの代表みたいですね。作者は小学六年生と 添書きがありました。立派です。続けてやって下さい。


名月は世の災(わざわ)ひを包むごと
          手延ぶれば届く光降らせり

竜前     辻 彌生

 評 

仲秋の名月が近づいて来ました。月を眺めている間は、つらい事や心配ごと は忘れてしまします。下句手延べば…に光り渡る月光・美しい月夜を想像し ています。


                        【寸評 池田和栄】