赤飯は貧血予防に効果的です

2015年4月発行

  イネは、紀元前4000年頃から中国やインドで栽培されました。

わが国へは揚子江河口域より対馬海流に乗って南朝鮮を経由するか、

あるいは直接北九州に伝わったとされていて、

稲作の始まりは縄文時代晩期まで遡ることができます。

飛鳥時代には粳(ウルチ)と糯(モチ)の記事が見られます。

また色はもともと混在していたものを選別して、

主に白色種を食用、黒色種を薬用、赤色種を神事用としたようです。


 黒米は、古来より“薬用米”として歴代中国皇帝への「貢物」に献上されてきました。

白米に比べて高蛋白質で、ビタミンEが4倍以上含まれています。

脾臓や肝臓を温めて滋養強壮、精力増強、血流促進などの効能があります。

現在の”赤飯”は「小豆」や「ささげ豆」を利用して作られますが、

元来は白米に少量の黒米(2合に茶さじ1杯程度)を加えて炊いたものが正品です。

色素に鉄分が多く含まれ、貧血や目眩の症状を改善する働きが強いものです。

「初潮を赤飯で祝う」風習には、実は貧血予防の目的も加味されていたわけで、

先人の知恵には今更ながら脱帽の感があります。


 一方、赤米は神に供えるお米(神饌米)として、

毎年天皇が“お手植え”に用いられます。炊き立ては赤褐色を呈しますが、

冷めると褐色となり、食味もかなり劣ります。

白米種より冷水に強い品種だけが”水口稲”として生き残ったものと考えられます。


                                                小浜病院薬草園管理アドバイザー 渡辺 斉