第69回(令和3年夏の部)入選作品


この空の下に禍拡がると信じられない青さ眩しき     

                        上竹原 山口 豊子

【寸 評】

青さ眩しきと結句で全体を引き締めている。自分の主張信念が

よく読みとれる御うたです。


尺取虫オメガの文字を描き出す梅雨入り前の茜さす庭            

                        中井 古谷 智子

【寸 評】 

尺取虫の歩く姿がΩオメガの様だと捉えたところに感性をみます。

情景も茜さす庭とまとめもすばらしい御うたです。


スペインの子供のノートにサインする日本の文字を喜び次次と

                     山手 前島 民枝

【寸 評】

スペインの子供達との交流の様子が具体的によく表現されています。

外国に交流でいかれた時の御うたでしょう。


コロナ禍の散歩道での挨拶はワクチン接種のことばかりなり

                     西相生 早 まさえ

  【寸 評】

現代の世情をよく移し出しています。散歩道がよくきいて焦点となり、

日常詠としてよい御うたです。


 「坊ちゃん」を語り聞かせる父のそば姉は十一吾は九つ 

                         敦賀市 的場 正夫

【寸 評】

幼き時の一場面を短歌にされ無駄なことばもなくすばらしい一首に

なりました。情感余情のある文学を感じます。