第67回(令和2年冬の部)入選作品


藍色の花瓶に水仙挿し置けば小部屋に(ただよ)(ほの)かな香り     

                           和多田 芝 美代子

【寸 評】

藍色の花瓶と水仙、小部屋との情景が奥ゆき深く感じる仄かな香りで一層情感が増します。


門に置く(かめ)(せん)()の浮かびゐて驟雨(にわかあめ)嬉嬉(きき)と踊りゐるか       

                           中井 古谷 義次

【寸 評】 

「荷」は中国では蓮の花のことを言います。つまり、銭の葉が生き生きと跳ねているように見えました。

お菓子屋さんの前に相応しい風景でした。千客万来と。(作者寸評)


幼な日に見かけし岸ゆく帆掛け船恋ひつつ眺む古里の海   

                            中井 近者 綾子

【寸 評】

作者は海の近くで育ったのでしょう。今帆掛け船を眺めている情景が目に浮かぶようです。

結句を体言止めにしたところが余韻を残します。


若人のボートが滑る南川背を押す風は多田ヶ岳から

                          駅前町 岩井 独果

【寸 評】

川面にボート、若人と生き生きとした様子が読み取れ、多田ヶ岳からで風向きも読み取ることが出来ます。

さわやかな感じが読みとれて好感がもてる一首です。


 内職の手を休めては一服にホットひと息大福万寿  

                              今宮 N

【寸 評】

日常の中のひとこまがよく表現されています。大福万寿を結句にもってきて味も香りも

漂う心情が表れています。


寸評 古谷 尚子