第65回(令和2年夏の部)入選作品


鯖街道起点なりたる泉町記憶のみなり街並み消えて

                       古谷 義次

【寸 評】

道路拡張のため鯖街道の様子が一変した寂寞とした作者の心情があらわれている。


城址より見ゆる入江の双児島今校舎の陰見えずなりたり

                       松崎 暉子

【寸 評】 

 小浜城址より眺めている作者の位置がしっかり詠まれていて 

双児島の見えない寂しさがよく表出されている。


根を張りて取れど蔓延る雑草も花は可愛く夏を告げくる

                       近者 孝一

【寸 評】

 冬の間に根を張り生気を整えている雑草もかわいい花をつけ

夏を告げているようだ。と雑草のたくましさ、いとしさを詠んでいる。

季節感を的確に表現している。


君の地の訛聞こえる道の駅媼二人の声弾みをり

                       米田 愛子        

【寸 評】

道の駅に立ち寄ったら聞いたことのある訛ことばがきこえてきた。

ふと見れば媼二人の高い声久しぶりに会ったのだろう。

何気ない風景を切りとり巧みに表現している。


 電柵で畑を囲みて鹿対策夜明けに夫は急ぎ様子を

                        内田 春美 

【寸 評】

鹿や猪の対策を練る時代となり人間と獣の知恵比べである。

夜が明けると心が急ぎどうなっているのか見に行く夫の様子が想像される。


                         【寸評  古谷 尚子