第57回作品

聞こえくる島唄吾れも口ずさむ奄美の風の頬に爽やか

小浜市千種 平田 卿子

寸 評

やさしいことばでリズムよく歌われています。抒情豊かで
さわやかな気分にさせてくれるところに魅力を感じます。


考へぬ葦もよからう昼ひなかりんごの皮をながながとむく

小浜市清滝 田所 芳子

寸 評 

「考える葦」を逆転の発想で詠んだところに作者の深い思いがあります。
考えぬこと善しとして自身を納得させている作者。
けれども「ながながとむく」に一沫の淋しさが伝わります。


海道でつなぐ若狭と隠岐の島八百杉植えし八百比丘尼

小浜市西相生 岡 正實

寸 評

上の句にスケールの大きさを感じます。下の句に、
若狭の伝説八百姫を詠んだのが印象的。「つなぐ」から、
比丘尼は遠く隠岐まで行脚して杉の苗木を植えていったのでしょう。
ことがらを整然とうたわれています。


戒名の太きみ墓に香を焚く戦没されし若き兵士に

おおい町岡田 堀口 寿々喜

寸 評

作者の敬虔な気持ちが出ています。戦後七十年の今年、
あらためて戦禍に散った未来ある若者が惜しまれます。


餅草を重宝したるよもぎ葉も畠に広ごりため息をつく

小浜市雲浜 塩谷 トミ子

寸 評

むすびの「ため息をつく」に思わず笑ってしまいます。擬人化の
発想と失望感溢れる言葉がユニーク。これからもお元気で。


【 撰 谷口 正枝 】