第46回入選作品(平成25年5月)

ためらひつつ八十路の面に紅ひきて
        鏡の吾に楚楚とほほゑむ

小浜市上野  岡本 澄子

                          

紅をひき、つつましさを兼ね備えた女性としての自分を鏡に写し、凛とした美しさを確かめている作者。豊かな心のありようや来し方が伝わってきます。


中学校では仲良しの友と離れたが
        帰宅後電話で話が弾む

小浜市新小松原 船井 真愛(小浜中一年)

                          

新しい中学校生活で友とも離れ、不安を抱く女生徒の繊細な心が読みとれます。
でも家へ帰れば友との電話で話題がいっぱい。結局「話が弾む」が若々しくてとてもいい感じ。


四苦八苦してとり変へし蛍光灯
        家人は誰も気づかずにゐる

小浜市太興寺 田中 ふじ子

                          

蛍光灯のとり変えというささやかな出来事を作者の視点でユーモラスに詠まれています。下句から、作者の嘆息が聞こえてきそうですが、これこそが平和な日常と読書の心を和ませてくれます。
結句の意外性が何とも可笑しい。


この茶店地場産の木に建てられて
        コーヒー飲みつつ木の香楽しむ

小浜市青井 竹村 祐美子

                          

歌のリズムよく、趣きのある歌。二句「地場産の木」に温もりが感じられ、結句がこれをよく支えています。至福の時を満喫している作者同様、気分が和みますね。


犬小屋にしきりに尾を振る子犬らは
        居眠る母の胸探りゐる

小浜市和多田 芝 令子

 評 

子犬や母犬の様子を見たまま詠まれていますが、作者の暖かい眼差しが感じられる歌になりました。子犬の狙いはオッパイ。子犬のなすがままにいる母犬の大らかさも笑いを誘います。


【 撰 池田 和栄 】
【 撰 谷口 正枝 】