第40回入選作品(平成24年11月)

古写真展に記憶の侭の師にまみゆ
        遠き学舎に師の声偲ぶ

小浜市雲浜 塩谷 トミ子

                          

古写真の中に遠き思出の恩師の写っている写真に会い、遠き学舎に恩師の大きい声を思い出した。作者の驚きと胸のときめきが伝わってくる。


街の果てに酸漿色の月出でて
      暑き一日の漸く終はる

小浜市多田 藤井 喜美子

                          

あかい月は猛暑の日にのぼると言われています。酸漿(ほおずき)色の月が出た事を言って、その日の暑さは尋常ではなかったと窺(うかが)わせているところが面白い。


寮生は次々退寮してゆけり
      夜の灯火も微かとなりぬ

小浜市飯盛 古谷 擴子

                          

原発の労務者の寮でしょうか。原発の仕事に左右されやすい労務者、又寮営も。
夜、皓(こう)皓(こう)と灯してゐた明かりも微かとなり淋しくなった不安さが潜んでいる。


夜の風入れむと窓を開けゆくに
      白夜に似たる満月の照る

小浜市山王前 山本 敏子

                          

今年の暑さは格別でした。白夜に似たる満月、いい所を見られました。
皓皓と照る満月が読者にも想像できます。


白萩は枯山水に傾れ咲き
      風吹く儘に小花揺れをり

若狭町上野木 藤井 敏子

 評 

作者の庭には枯山水がある。築山(つきやま)から垂れる白萩それだけ想像しただけで深い詩情が伝わります。お幸せな作者。


【 撰 池田 和栄 】