競技かるたの楽しみ方

2019年2月発行

    しんと静まり返った中に朗々と声が流れます。


 「難波津に~咲くやこの花冬ごもり~」競技かるたは、

百人一首の下の句が書かれた札を二人で取り合う競技。

上の句が読まれる瞬間に手が走る、

まさに静と動が入り混じった「畳の上の格闘技」。


 藤原定家が編集した小倉百人一首の札を競技かるたとして確立したのは、

明治期の多彩な作家であり実業家の黒岩涙香です。

彼が手を染め研究し尽くしたものは、

あまりに多く囲碁界や将棋界、相撲界にも貢献しています。

特に競技かるたには力を注ぎルールを統一、

現在の全日本かるた協会へと繋がる礎を築き上げました。


 藤原定家が小倉百人一首に多くの謎を残したことは有名で、

凡歌や作者が曖昧といった歌もあります。

自分を取り立て、やがては離れて行った後鳥羽院への思いを

百首のクロスワードパズルに託したのではとも言われています。


 ただ競技かるたとしては、そういった裏の話よりも、

言葉遊びの楽しさを知るいい材料となります。

例えば大山札というもので

「朝ぼらけ」「君がため」「わたの原」は二首あり、

六字目を聞かなければ取れない「六字決まり」です。

他にも友札といって

「山川に」「山里は」とか「淡路島」「あはれとも」などは三字決まり。


 ちなみに小浜市田烏の沖の石を読んだ歌「わが袖は」は、

 「わが庵は」の友札。藤原定家がなぜ喜撰法師のこの歌を採ったのか。

「都のたつみ」とはどういうことなのか。

またしても謎好きな黒岩涙香へと戻って行きます。

宇田川節子(小浜市かるた協会「沖の石」会長)