昇り龍

2012年1月発行

 昨年の干支は辛卯(かのとう)。対立・矛盾する二つのものが、お互い相手に勝とうとして争う年回りでした。これを裏付けるかのように、太平洋プレートが日本列島に潜り込もうとしてせめぎ合いの結果、千年に一回という東日本大震災が起こりました。

 今年の干支は壬辰(みずのえたつ)。壬は陽の水、辰は陽の土。つまり、相剋(土剋水)で、溢れようとする水を土がせき止める年だそうです。

 昨年、全国でひんぱんに起こった地震や大雨による洪水を塞ぎ止め、少しでも平穏な年になることを願うものです。小浜もかつて大水害に見舞われ、他人ごとではありません。

 辰(龍)といえば、思い浮かぶのが京都・妙心寺法堂の天井に、狩野探幽が描いた雲龍の図です。直径十二メートル。龍の目は円相の中心に描かれていますが、立つ位置、見る角度によって龍の表情や動きが変化し、東から見れば昇り龍に見えます。

 国勢調査の結果、日本の人口が初めて減少しました。このことは、将来の国の勢いに赤信号が灯ったことを意味します。また、TPPに象徴されるようにグローバル化が急速に進み、日常生活においても、この先どのような事態が待ち受けているか予想もつきません。

 その時は、あわてふためくのではなく冷静に、立つ位置、見る角度をかえるなどこれまでと違った工夫により、この龍のごとく天にも昇る力強い大吉の運を引き当てたいものです。

若狭の語り部 会員 網本 恒治郎